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My Recommend Books !みなさんのオススメの本を熱く語り合いましょう!
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『東京物語』 奥田英朗 集英社文庫 (トラキチ)
奥田 英朗 / 集英社(2004/09) Amazonランキング:3,419位 Amazonおすすめ度: それぞれの「東京物語」(奥田版) 懐かしさを感じました 大いに共鳴! <直木賞作家、奥田英朗の原点> 本作は奥田英朗の作品でもっとも心地よく読者に受け入れられる青春小説の決定版とも言うべき作品である。 他作のようなエンターテイメント性は薄いが、作者の人となりが文章に滲み出ている点が嬉しい限りだ。 とりわけ、35才以上の読者が本書を手に取ればまるで自分が主人公になったかのごとく“懐かしいあの頃”に戻ることが出来る。 そう、バブル前、バブル絶頂期という時代をもういちどタイムスリップできるのである。
沼地のある森を抜けて(梨木香歩) 新潮社 ・・・ゆこりん
死んだおばから引き継いだのはぬか床だった。だが、そのぬか床は普通のぬか床ではなかった。ある日卵が現れて、そしてその卵から孵化したものは・・・。生命の不思議さを独特の感性で描いた作品。 人はどこから生まれてどこへ還るのか?お母さんのおなかから生まれて、最後に土に還る。そんな答えでは片付けられないものがこの作品には描かれていた。一般的な答えのようにしか生命は誕生しないのか?こんな疑問が浮かんでくる。「ぬか床や沼から命が生まれたとしても不思議ではない。」この作品を読むと、そう考えさせられてしまう。はるか昔、たった一つの細胞から今ある数々の生命が生まれた。その壮大なドラマ。ぬか床や沼の中にも宇宙は存在していたのではないだろうか。生命の神秘さや果てしない広がりを、感じずにはいられない作品だった。
『流星たちの宴』 白川道 新潮文庫 (苗村屋)
本書は最初に読んだとき強烈な印象を残した作品。そのうち再読をと思いつつ今日に至った。当時の鮮烈さはないもののやはりおもしろい作品。一気に読了した。いわゆる仕手集団、株屋を描いたものだが、作者が一時期身を置いていた世界のため、非常にリアリティがあり、切迫感のある作品であった。私自身、今までまじめに生きてきたせいか、このような放蕩の世界にあこがれる部分がある。今手元に1億円あったら・・・そんな思いを抱きながら読み進めた。主人公の雅之はもちろんのこと、彼を取り巻く、見崎、加治見、朝秀など魅力的な登場人物が魅力的な言葉を吐く。気障なのだが、何となく説得力のある言葉たち。気に入った言葉に線を引いていったら、最後の解説者も似たような部分を引用していた。やはり魅力的な言葉というのはある程度共有できるものなのだろう。
ここでその一部を抜粋。 見崎:「俺は二通りのタイプの人間を信用しない。平凡を愛していると公言するやつ。そして、自分を縛る美意識をもたぬやつ。男を裏切るのはいつもこのどちらかのタイプのやつだ」「気持ちが萎えそうになったら夜の首都高速にタクシーを走らせろ。群がるビルと、その間に光り輝く明かりの渦を見るといい。俺はこの街でやるぞ、ってな。そんな気持ちがあるうちは、余計な考えのほうが自分を避けてくれる」 理子:「写真で見るのと実際に見るのとは大違い。写真が伝えるのは物事の表面だけ。時間の流れがないんだもの。時間の流れの中で物事と一緒に過ごさなければ、本当の良さも、自分の成長もない、そんなふうにも思った。だって、時間の流れっていうことが、結局生きている証明というわけでしょう・・・」 朝秀:「設計の仕事というのはね、基本的にはなにもないとこから出発するんだ。できあがった物を見て、あれこれいう人はたくさんいる。でもね、時々、そんな人に白紙をあげてみたいと思うことがある。では、あれこれいう人のいったい何人が白紙に書き込むことができるのか、それを問いたい気持ちになるんだね。技術的なことをいっているんじゃないよ、あくまでもその白紙を埋める空想力、企画力のことをいってるんだ」 加治見:「辛いことなんてのは身体で覚え込ませるんだ。頭で考えているうちは辛さからいつまでたっても離れられねえぞ。身体が覚え込めば、そのうち自分の意思なんてのはそっちのけで身体が自然と反応するようになる。そうなりゃ、辛さなんてのはどうってこともなくなるさ」 「ギャラクシー」素晴らしい人の群れ、綺羅星のような人の集まり。「群星」群がる星。気障な名前を付けたものである。しかし、一瞬で消え行く流れ星のように、雅之は輝き流れていく。切なさと危うさと脆さと。無頼を装いながらも胸に沁みる作品であった。 ■Amazonで購入 ■苗村屋読書日記
脳男(首藤瓜於) ゆこりん
連続爆弾犯のアジトを見つけ踏み込んだが、そこには犯人と格闘する男がいた。彼は何者なのか?共犯者なのか?鷲谷真梨子は、鈴木一郎と名乗る男性の精神鑑定を依頼される。真梨子が知った彼の本性とは?江戸川乱歩賞受賞作品。 心や体に障害を持って生まれてくる人がいる。鈴木一郎もその一人だった。一見ほかの人となんら変わるところがないように見えるが、彼の本質は驚くべきものだった。一郎のしだいに明らかになる過去、そして本性を暴こうとする真梨子と一郎の緊迫したやり取りは、読み手を物語の中へのめり込ませる。一郎には卓越した能力もあった。この能力が別の形で生かされたなら、彼にはもっと違う人生もあったのではないだろうか。そう考えると哀れさを感じた。後半の息詰まる展開、そしてラスト・・・。見事にまとめられた、読み応えのある作品だった。
『ベルリン飛行指令』佐々木譲 新潮文庫(moco)
第二次世界大戦直前、帝国海軍の最新鋭戦闘機の高性能に目をつけた同盟国ドイツから依頼を受け、二人の海軍パイロットに極秘指令が下される。「零式戦闘機…ゼロ戦にてベルリンへ向かえ」。風雲急を告げる世界情勢の中、安藤大尉と乾空曹は空を翔ける。 安藤大尉と乾空曹の二人がまさに「空の男」。生粋の「空の男」であったがために軍では厄介者として扱われ冷遇されていた二人が翼を取り戻したことで、息を吹き返す様子が見事に描かれている。そしてその二人をサポートする海軍大貫少佐と山脇書記官の奔走ぶりも忘れてはならない。…などと堅いことを書いてる場合ではないっ!。とにかく安藤大尉がいい男なのだ。いい男好きの人は読むべし!。心身ともに厳しいミッションであるにも関わらず、「蛮行よりも愚考を選ぶ」という安藤大尉の言葉に飛行機乗りとして、というよりは人間としてのプライドを感じ、深く胸を打たれた。 佐々木氏の「第二次世界大戦三部作」の第一作ということだが、直接戦争の悲惨さとか残酷さを書いたものではない。そんな中にも当時の世界情勢の緊迫感を感じとることが出来る。特に当時英国の植民地であったインド国内の地下活動はなかなか読み応えがあった。 読み終えてから「飛べない豚はただの豚…」と言い切った「紅の豚」の主人公ボルコを思い出した。空翔けることに信念を持つ男は人間であれ、豚であれ総じてカッコいいものなのだ。
キップをなくして 池澤夏樹 f丸
キップをなくして 池澤 夏樹 いい小説でした。押し付けがましくなく、それでいて淡々としすぎているわけでもない。けっこう突飛な設定なのに、その突飛が完全に今の現代人の日常生活にすぽっとうまいこと入って溶け込んで、読書の世界にすんなり入り込むことが出来るほんわかした優しい魔法みたいなファンタジーのお手本みたいな小説でした。 自分はラストの徳光和夫や西村知美ならば号泣まちがいなしのお別れのシーンを完全にスルーしてしまった人間で、そういう意味ではこの「キップをなくして」のよい読者としては失格なのでしょう。 けれども子供たちのわいわいした童話にも似たような明るい雰囲気のなかで、たまに垣間見ることができる「どうして自分ばかり・・・」ということに対しての、控えめな子供ながらの諦念そして強がりの描写は、ゴーストストーリーの中でもトップレベルの切なさと思いました。 なによりもやはり池澤夏樹の世界観は誰にでも優しくてそして公平です!そこがまた読んでいて気持ちいいです。
『PAY DAY!!!【ペイ・デイ!!!】』 山田詠美 新潮文庫 (聖月)
今は家族を鹿児島に置いて東京へ単身赴任している評者なのだが、以前勤めていた職場に種子島から同い年の同僚が家族で赴任してきたときのこと。この同僚っていうのが、パチンコが下手糞なのにパチンコ好きで、飲んだら呑まれて担がれるか嫁さんが迎えに来るというパターンでしか家に戻れないという、どうしようもない同い年だったのである。その彼が、唯一パチンコの誘惑にも社内の人間の誘いにも乗らない日というのがあって、それが月一回の給料日(ペイデイ!!!)だったのである。家族(親子)で食事に行く日なのである。 最初の頃こそ、島にはないチェーン店の焼肉屋とかに行っていたようなのだが、親子共々新しい地に慣れてくると、吉野家とかラーメン屋とか、そんなところに行っていたようである。外食なら子供たちも夫婦もどこでもよかったらしい。ただ、外食には行かないといけないらしい。何しろペイデイ!!!なのだから。
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