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My Recommend Books !みなさんのオススメの本を熱く語り合いましょう!
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『介護入門』 モブ・ノリオ 文藝春秋 (ゆこりん)
寝たきりになった祖母の介護を通して、人間の本質や、生きることの意味を描いた作品。芥川賞受賞作品。 読んでまず、題名から受ける印象とはまるで違うのに驚いた。文章の羅列とも思える描き方に少々戸惑いもした。だが、そこに書かれているのは、まぎれもなく祖母を介護する姿だった。介護を通して自分の生き様や人の本質を見抜こうとする、作者の鋭い目が光る。「介護」を決して苦痛とか負担とかそういう視点で捕らえないところが、この作品を輝かせている。実際の介護は大変な部分もあっただろう。でもこんなふうに笑ってできれば、介護する側もされる側も、幸せな気分になれるのではないだろうか。それはとても難しいことなのだけれど・・・。
『日曜日たち』 吉田修一 講談社 (聖月)
『日曜日たち』、この複数形の題名が評者の好みである。"空(そら)"とか"水"というただ空や水だけを指す言葉も、"空たち""水たち"という複数形の表現にするだけで、一気に多面性、存在性を帯びてくる。"空"というと、ただ単に空を思い浮かべる評者も、"空たち"と言われれば夕焼け空や、雪が降ってきそうな空や、スカンジナビアの空のことどもを想像してしまう。だから、『日曜日たち』っていう題名だけで、"どんな日曜日たちの情景が書かれているんだべさ?"とワクワクしてくるのである。 おまけに、短編集である本書に収められている5つの短篇の題名たちは『日曜日のエレベーター』『日曜日の被害者』『日曜日の新郎たち』『日曜日の運勢』ときて、最後に『日曜日たち』と括るような題名がきているので、何故かワクワク度が増した評者なのである。
『出口のない海』 横山秀夫 講談社 (ゆこりん)
甲子園の優勝投手である並木浩二は、大学に入ってからヒジの故障で苦しんでいた。ある日彼は、速球のかわりに魔球を投げることを思いつく。毎日練習に明け暮れる日々。だが、戦争の暗い影が日本全体を覆い始めていた・・・。 平和な世の中なら、勉強に、スポーツにと、毎日の生活を楽しんでいる時期だろう。だが戦争は、並木やその仲間たちを戦場へと送り出す。そして並木は「回天」に乗ることを決意する。それは特攻兵器!一度それに乗って出撃すれば、二度と生きては戻れない。家族や恋人への思い、そして「生」への未練。並木の心は揺れる。その心情が痛いほど伝わってくる。最後まで魔球完成を夢見た並木。その思いを受け止めた仲間たち。戦争の悲惨さをあらためて思う。できれば、マウンドの上で魔球を投げさせてやりたかった。こんな悲劇がもう二度と起こらないようにと、願わずにはいられない。
『コンスエラ』 ダン・ローズ アンドリュース・プレス (f丸)
「ティモレオン」の絶賛から約一年半、イギリスの若き巨匠ダンローズがまた、日本に上陸してくださいました。とはいっても「ティモレオン」より執筆は前ですが。 この「コンスエラ」の恋愛小説のスタンスは完結に言うと、「他者の介入を許さない完全に自己完結した、美しい愛」です。恋愛なのに、他者を必要としません。そんな思い切った斬新なスタイルなのです。 この短編集にでてくる主人公たちは、自分の愛情を受け取る相手への愛を自分の中で膨らませて膨らませて膨らませます。 こんな相手の思いと自分の思いがアンバランスな関係はたいてい破綻をむかえます。日本の小説でいうと、ストーカーになるとか、精神異常者として扱われて犯罪に走るように。 けれども、「コンスエラ」では、彼らの重すぎるほどの思いは特殊な条件によって成就します。それは、まるでおとぎ話のような寓話的で童話のような形です。 それは誰からも祝福されるような幸せではありません。王子様とお姫様の結婚みたいなハッピーエンドじゃなく、血液を固めて作られたハートみたいな、痛々しいのに美しい不思議な愛のしるしです。普通の常識ではアンハッピーエンドです。 それでも、彼らにとっては幸せなのです。 日本の作家で言うとやはり江国香織さんが一番近いです。それでも、江国さんの世界は「あなたと私の美しい、けれども壊れやすい愛」なのに対して、ダンローズは自分ひとりの、終わりを迎えない(であろう)強固な愛です。 とりあえずほかに類を見ないと思われる小説だと思います。
年末企画やります。
[ ご案内&お知らせ ]
こんにちは、いつもお世話になっています。樽井です。
今年も恒例の(去年はできませんでしたが)、「今年読んだ本ベスト10」を実施させていただきたいと思います。
『いづみ語録』 鈴木いづみ 文遊社 (ルアーナ)
江國香織さんが言っていたからではないが、 びっくりした。そして、強く興味を惹かれた。 鈴木いづみ、わたしはこの人の存在を知らなかったが、 江國香織さんの『泣く大人』に書いてあったので借りてみた。 「二月某日 友人の送ってくれた『いずみ語録』 (鈴木いづみ、文遊社)を読む。びっくりした。いままで全く 読んだことがなかったが、このひとの書いたものをちゃんと 読んでみたいと、思った。」(『泣く大人』江國香織著より) 鈴木いずみはモデル、俳優、作家であり、その存在自体が 70年代を体現していたという。 そして、1986年に36歳で首吊り自殺で死亡している。
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