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My Recommend Books !みなさんのオススメの本を熱く語り合いましょう!
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『FINE DAYS』 本多孝好 祥伝社 (星落秋風五丈原)
< 恋愛にはもってこいの日 > 「Fine 」は、「晴れている」の訳語だが、他の同義語「nice、fair、clear」と比べると、やや消極的な意味合いが強い。同じ「晴れ」でも、「雨の降ってない日」「雲の少ない日」の事を言う。過去の恋愛を天気に例えると、太陽と雲が同居する、そんな日になるのかもしれない。 過去の恋愛は、どれも最終的には別れの涙で終わる。 今ならば、もっとうまく言えたのに。もっと優しく出来たのに。あの時別の言い方をすれば、今頃あの人は、私のそばにいてくれたんだろうか? 思い出せば、悔いばかり。言っても詮無い事を、際限なく思い起こし、やがて「仕方ないんだ」と区切りをつけて、自ら招いた苦さを飲み込む。 それでも、楽しかった思い出は、いくつかある。 これから二人がどんな人に会おうと、その思い出だけは、二人だけのもの。 口に出すと照れるから言わないが、考えると笑みがこぼれる。 雲の晴れ間を見つけた時のように。
本書は、現在進行形の恋愛を描いた作品『FINE DAYS』『眠りのための暖かな場所』、過去と現在の恋愛が絡み合う作品『イエスタデイズ』『シェード』に分かれる。いずれの登場人物も年若く、とても不器用な形でしか、気持ちを表現できない。また気持ちの制御もできず、生の感情をぶつけて、自分も相手も傷つける。表題作では、美人転校生の登場により、自分の感情を制御できなくなった神崎は、彼女の髪を切り、更に行動をエスカレートさせる。「僕の甘え方が下手だったのかもしれないし、親父の受け止め方が下手だったのかもしれない」と自覚する『イエスタデイズ』の主人公は、「よく似ている」と言われる父の若き不器用さを目撃する。『シェード』の主人公は、愛する人の過去に嫉妬し、『眠りのための暖かな場所』のヒロインは、9才の妹を死なせた罪の意識におののき、一方の相手・ツトムは見えない影に怯え続ける。
本多氏は、追い詰められた彼等を、自分あるいは他者の言葉の力で、ぐいい、と崖っぷちから力強く引っ張ってくる。 「人間は日々強くなれるし、賢くなれる。今よりずっと強くなって賢くなれば、答えは見つからなくても何とか折り合いをつけながら生きていられると思う」 『FINE DAYS』 「僕は今の君が大好きだよ たとえ君自身がやがて今の君を必要としなくなっても 忘れ去ってしまったとしても」 『イエスタデイズ』 「ここから先の時の中に、自分の力では選びえないものがあふれているとしても、私はその時に向かってこうぜんと胸を張っていたい」 『眠りのための暖かな場所』 「言葉でいくら言ったって、その通りにするとは限らない。また周りの状況によっては、その通りになるとも限らない。所詮は机上の空論だ。」 そう言われれば、身も蓋もない。 けれど、とにかく思ってみよう。雲の中で、もがき苦しんでいるだけでは、何も変わらない。まず思い。それから思いを言葉にして、 自分の力に蓄える。そして、「必ず雲の間から陽が差す。」 そう信じられて、勇気が出たら、その時一歩を踏み出せばいい。 時に迷う事があれば、確信が持てないながら、一歩を踏み出そうとしている彼の、こんな言葉が力になるだろう。 「僕にともせるのは呆れるほどにか弱く頼りない火だ。ささやかな風にも揺らいでしまう。その小さな火を本当に守りつづけることができるのか。今の僕にはわからない。でも、やってみようとおもう。」 『シェード』 Comment
星落秋風五丈原 (2005/08/25 12:20 AM)
のぼねこさん、みなさん、こんばんは。私は『ALONE TOGETHER』『MISSING』『MOMENT』『FINE DAYS』『真夜中の五分前 』を読みました。『MISSING』では、レビューでも書いているのですが、『瑠璃』が映画『君といた夏』みたいだなぁと思いました。
のぽねこ (2005/08/21 7:44 AM)
星落秋風五丈原さん、お返事ありがとうございます。
『MISSNG』『MOMENT』の二作です。特に『MOMENT』を本書のすぐ前に読んでいたので、感動つながりでした。 他の作品も、機会を見つけては買って、読むつもりです。読むのが楽しみな作家さんの一人になりました。
星落秋風五丈原 (2005/08/18 8:08 PM)
のぼねこさん、みなさん、こんばんは。
のぼねこさんは本多さんの本のうちどれを読まれたのですか?最近市川さんや石田さん達と一緒に短編集が出ましたね。『真夜中の五分前』は今ひとつでしたが、その他の本は私も好きです。
のぽねこ (2005/08/14 11:45 AM)
星落秋風五丈原さんのレビューも素敵で、本書を思い出してまたうるうるしてしまいました。
本多さんの本を読んだのはこれが三冊目ですが、素敵な物語だなぁ、と思います。 「眠りのための暖かな場所」より。 「赦す、と、嘘でもいい。誰かにそう言って欲しかった」 いろんな本を読んで、自分の気持ちにすっと入ってくる、自分の気持ちをうまく言い表している言葉にであえると、私は本当に幸せに感じます。 まとまりのないコメントになってすみません…。 では、失礼します。 Trackback
本多孝好『FINEDAYS』〜祥伝社〜「FINEDAYS」転校してきた二年生の女子。三年生の僕が反省文を書いていると、彼女も同じ教室にやってきて、「反省文」を書きはじめた。中学校からの知り合いである安井は、女子のリーダー的存在だった。安井は、彼女についての噂をいくつ
| のぽねこミステリ館 | 2005/08/14 11:39 AM |
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さらに素敵なレビューが上乗せされてる!!
そんな感動をしました。
私のブログで紹介させて頂いてます。