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『リピート』 乾くるみ 文藝春秋 (でこぽん)
設定はSFなんだけど、本格ミステリの要素もある、なんとも贅沢なエンタテインメントでした。とにかく文章が読み易い。スラスラと一気に読めるので、余計なことを考えないでエンディングまで楽しんでほしいです。
私はといえば『イニシエーション・ラブ』の後遺症というのか、あの衝撃が頭にチラチラしていたため、読み方を間違ったようです。乾くるみだし絶対何か仕掛けてくるに違いない、今度こそ騙されないと思いながら読んだのですが。結果は…惨敗でした。う〜ん。すごいなあ、乾くるみ。ということで、素直にエンタメとして楽しんだほうがいいみたいです。でもまあ、『イニシエーション・ラブ』の衝撃や時代設定が頭にあったから、より一層楽しめたというのもあるかもしれない。 話は、謎の男である、風間と一緒に過去へと戻るんだけど、何故自分たちの仲間ばかりが死んでいくのか、犯人は一体誰なのか、というもの。どうしてこうも次々と死んでゆくのか。誰も犯人でなければ、これは一体どういうことなのか。いつ自分の番になるのかわからない、というのは恐怖ですよね。このあたりはとても面白い。主人公の性格はどんどん変わってくるし、登場人物が多彩なので読んでいて飽きない。それにしても一番好きなのは、頭が切れて、頼もしい、殺し屋スタイルの天童でした。 《リピート》というのは、現在の記憶を持ったまま、過去に戻ったことによってやり直すことのできる人生です。だからリピーターの特権は《未来の記憶》を有している点にあります。競馬で稼いで悠々自適な生活を送るのもいいでしょう。ただし、戻る日時は決まってるし、10ヵ月前にしか戻れないのです。 この10ヵ月というのが微妙。だいたい常識からいってリピートなどという現象は起こり得ないのですが、これについては毛利たちも散々議論します。で、この前提を受け入れて本当に過去にいってみたいか考えてみる。駄目です。面倒なだけ。私ならお断りする。だいたいいい年をしてちょっと過去に行ったって、若さが戻るわけでもないし、楽しい恋愛ができるわけでもないから。 ところが、毛利はこのゲームに参加することに決めます。過去の自分に戻れた場合、自分は何を目的として人生をやり直せばいいのか、そのためには何を憶えていけばいいのか、と真剣に考える。そう、ゲームに参加した時点で、彼の運命の歯車は回ってしまったのです。この偶然を幸運ととらえるか、不運だったととらえるか。 それにしても傍観者のような風間は一体何者なのか。なぜ彼は10回もリピートを繰り返しているのか。次々に仲間が死んでいっても、ひとり落ち着いているのは何故なのか。ちょっと想像できない理由が待っています。 ラストは…好きですね。こういうの。 本格ミステリとして読んでもいいし、エンタメとしても楽しめるお得な一冊。 『イニシエーション・ラブ』の驚愕も好きですが、ミステリとしては私はこの『リピート』のほうを押します。 Comment
コロン (2005/07/02 7:39 PM)
初めまして、
今リピートを読んでいます。 自分のHPにこの本のことをアップしようよ思い、検索していてこちらにたどり着きました。 つい最近イニシエーションラブを読んだばかりなので、 私も何かあるんじゃないかって思いながら読んでいる最中です。 今1/3読みました、これから先、、どうなるのか、、 わくわくしています。 この気持ちを誰かに伝えたくて、 書き込みさせていただきました。
でこぽん (2004/12/23 8:58 AM)
あら、御覧になってたのね〜。聖月さん、おはよ〜。。
なにはともあれ、「ここまで細かいタイムスリップ設定の描写」っていうのが嬉しいです。 『リプレイ』が25年、『リピート』が10ヵ月っていうのが味噌ね。 それにしても『Y』をやけにプッシュされてるのね。これだけオススメされては読まないといけないですね。 今から四時間テニスをしてきま〜す。 だ、か、ら、『漆黒の王子』の感想はまだまだでーす。 ご指名、ありがと〜。。
聖月 (2004/12/22 11:31 PM)
聖月さんは見ていました、ははは。
ひとつ言えるのはですね、その昔『リプレイ』を読んで凄い本だ!と感動した人にはですね、この『リピート』のタイムスリップにおけるロジックやズレの考え方っていうのが、目新しくないというか、焼き直しに映るっていうか。 それでもあえてそれに挑戦して、別のギミックを用意しているっていうのは中々という感じですかね。 『リプレイ』が必読かどうかは別にして、『リプレイ』がなければ乾くるみもここまで細かいタイムスリップ設定の描写を書き込めなかったんじゃないかと。 結局、昔『リプレイ』を読んだことがあって、今回『リピート』を読む機会に恵まれた人は結果的にそういうことを奇貨と受け止めればいいんじゃないんでしょうか。 同じオマージュ作品『Y』佐藤正午はいいぞ!とだけ言って、さらば!
でこぽん (2004/12/22 10:01 PM)
ココさん、こんばんは。
書き込みありがとうございます。 乾さんは仕掛けが大きいですからね。自分の読み方で良かったのかと、後で気になってくるのだと思います。 今回はかなり注意深く読んだつもりでしたが、真犯人といいますか、真相が全く判らなかったです。またしてもやられました。「ミッシング・リンク」のことは考えもしませんでした。ううっ、くやしいです。 それからラストですが、賛否両論ありますが、私は嫌いではないです。 今回のタロットカードは運命の輪ですよね。そのタロットカードの意味を考えると、ラストを単純に額面どおりに受け取ってもいいのかなと思ったりしています。乾さんですからね。なんか意味があるように思います。 年代もなぜ1991年なのでしょうね。 単純に携帯電話が使えないという設定がほしかっただけでしょうか。 それともタロットカードの番号との関係でしょうか。 『リプレイ』はですね……ここで訊かれるとは思っていませんでした。 す、すみません。半分読んで返却しました。 聖月さん、見てる?ごめんちゃい(^^;;; こんな私が言うのもおこがましいのですが、『リプレイ』は必読です。 やはりこれを読んでから『リピート』を読めば良かったですね。 そうしたら、もう少しなんとかなったように思います。 ココさんは是非お読みくださいね。
ココ (2004/12/22 3:42 PM)
でこぽんさん、こんにちは。
TBありがとうございます。 この本は読んでから少し時間が経った今でも、思い出すと肌がザワザワします。 なんでしょう・・・ もともとSF的設定が苦手というのもあるのですが、何度もリピートする異常さ、人間のエゴ、そんなものが怖いなと思って、でしょうか。 乾さんは『イニシエーション・ラブ』とこれで二作品しか読んでいませんが、どうにも気になる方です。 それはそうと、とりあえず『リプレイ』を読んでみようと思っていますが、でこぽんさんは読まれましたか?
でこぽん (2004/12/06 2:24 PM)
おとぎさん、こんにちは。
コメント&トラバありがとうございます。 『リピート』は面白かったですね。 読み終わってから何度も考えていたら、頭の中がぐるぐるしてきて困りました。 これは本格ミステリですが、文章が普通ですごく読み易いので、ホント他人に薦められますよね。『イニシエーション・ラブ』のときは何度壁に投げようかと思いましたから。まあ、これは真相が判ったときは、血が逆流するほど仰天しましたが。 『スキップ』は未読です。 スキップするのかは判らないですが、R0の記憶が非常に気になります。 そういえば、リピート時の記憶がなかったですね。各々の世界で予定外のことが起こっても、つまりは運命には逆らえないということでしょうか。 そして、記憶があるのは○○だけなんでしょうか。とすると、○○は△んでいないということかしら。
おとぎ (2004/12/05 10:10 PM)
でこぽんさん、こんにちは!
マイレコ投稿しようとしたら、既にあったので、コメント・トラバします。 「リピート」面白かったです! 私はどちらかというと、本格ミステリとしての論理性を高く評価しているのですが、でこぽんさんのおっしゃるように贅沢なエンタテインメントでもありますよね。 読みやすいので、これなら他人にも薦めやすいし。 あ、リピート後、どうなるのかは私も想像しましたよ。 でこぽんさんは既読かわかりませんが、北村薫の「スキップ」ご存知ですか? もしかすると、リピートで戻った時点から、入れ替わりにスキップしてしまうのではないかと。 それでも辻褄は合わない部分もあるのですが、当然、リピートの記憶もないし、「私の半年はどうなったの?」ってことに・・ あくまで空想の産物ですけどね。なんか不思議です。
でこぽん (2004/12/02 9:47 PM)
PNUさん、コメントありがとうございます♪
面白かったですね。とにかく乾さんがこんなに読みやすい文章を書くなんてちょっと吃驚でした。なにせ『イニシエーション・ラブ』のネタのような文章が頭に残っていたものですから。 ラストは、評価の分かれるところでしょうが、私は好きですね。そして、ついその続きを考えてしまいます。この後のことはネタバレになるので話せないのが辛いのですが、今の記憶を持ったまま身体だけ過去へ戻るというところと《リピート》との関係を考えたとき、では彼らはどうなったかということです。《リピート》した時の記憶というのはどうなっているのでしょうね。 天童はナイスでしたね。主人公がいまいちだったので、というか、なんで彼はあんなにもてるのでしょうか。それに比べて、天童は悪ぶっているけど頼もしい味方で、毛利はほんと助かったと思います。私も彼が大好きです。
PNU (2004/12/02 4:19 PM)
でこぽんさん、こんにちは♪「リピート」面白かったですねー。まさにジェットコースターのごとき怒濤の展開でした。ラストには寂寥感をおぼえましたけど…。
私がいちばん好きなのは、やはり天童さんです。あの不敵さがヤミツキになってしまいます。
f丸 (2004/11/19 4:39 PM)
すいません、二重投稿しちゃいました。ごめんなさい。
今読み返してみると、そっけない感想という印象ですが、読んでいる間はなかなか面白かったですよ。 Trackback
「乾くるみ」のミステリー(タイムトラベルSF?)作品『リピート』を読みました。
[画像]
『イニシエーション・ラブ』に続き「乾くるみ」作品ですね。
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『イニシエーション・ラブ』の著者が挑むミステリーのはなれわざ!
現在の記憶を持ったま
| じゅうのblog | 2014/04/21 11:14 PM |
著者:乾くるみ 大学生の毛利桂介はある日突然、「地震予言」の電話を受ける。半信半
| たこの感想文 | 2005/07/27 12:42 AM |
リピート
乾 くるみ
今年の1月13日に戻ることができる、しかも、記憶はそのままに、と言われたら、自分だったらどうするでしょう。
物語の中でも、とりあえず競馬の結果を頭に入れて、万馬券で儲け、その後の生活を楽にするという提案がでます。
でも、戻れるの
| 本を読むって楽しい | 2004/12/22 3:43 PM |
リピート
乾 くるみ
★★★★★
これはすごい!
あの衝撃作「イニシエーション・ラブ」をも超える大傑作ではないでしょうか!
「このミス」とかの期間外の作品ですが、今年NO.1ミステリに押してもいいかもしれないです!
大学生毛利に掛かってきた不審電話
| 物語の宝石箱 | 2004/12/05 10:11 PM |
『晴子情歌』高村薫の書評内でも書いたが、1990年のこのミスにランクインした『リプレイ』ケン・グリムウッドは素晴らしい作品である。評者はこの年、多分小説はこの本一冊しか読んでおらず、勿論このミスなんてランキングがあるのも知らず、ただただどこぞで見かけた
| 「本のことども」by聖月 | 2004/12/02 11:46 PM |
一本の地震予知の電話が、運命を変える?SFでもありサスペンスでもあり。スリリングな展開と、深まる謎がステキなノン・ストップの1冊。ブラックなテイスト全開で、これがなかなか面白い。読後の喪失感やいい意味での脱力感、徒労感がたまらない、乾作品らしいビタ
| PNU読書 | 2004/12/02 4:23 PM |
リピート
現在の記憶をそのままに過去の自分に戻って人生をやり直す「リピート」に臨んだ10人が、次々と不可解な死を迎える。彼らの前に立ちはだかる殺人鬼の正体とは!? 「リプレイ」+「そして誰もいなくなった」の衝撃。
図書館本は、帯がないのがとても残
| どこまで行ったらお茶の時間 | 2004/11/25 1:12 PM |
乾くるみの「リピート」を読破しましたよん♪ちょこっと読んで、「あ、これ、『リプレイ』のパクリやん。だから、こんなタイトルにしたのね。ビックリマンのロッチみたいな関係かしら?」と思ったら、小説内で「リプレイ」おもいっきし出てくるし。
ちなみに、「リプレ
| f丸の生態・デイリー | 2004/11/19 4:35 PM |
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『リピート』は面白いです。乾さんですから、もちろんミステリとして凝った仕掛けがありますが、エンタメとしても面白いので、どうぞ最後まで楽しんでくださいね。
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それではどうもありがとうございました。